令嬢と不良 ~天然お嬢様の危険な恋~
次の日の夕方、俺がバイト先に行くと、俺と入れ違うように杏里さんは帰って行った。店長に背中を押されながら。


「お疲れ様です」

「お先に……」


帰り際、杏里さんは『何とかなんないの?』的な事を俺に目で訴えたが、俺は苦笑いを返すしか出来なかった。店長の、俺と杏里さんを引き離そうとする作戦は日に日にその徹底さを増しているようだ。

そんな店長の必死さは滑稽だが、気持ちは解らなくもない。同じ男として。


それにしてもこの店、よく維持出来てるよなあ。今、ひと組のカップルが帰って行き、客は誰もいなくなってしまった。本来は書き入れ時なのに、大丈夫なんだろうか。


店長は昔、イタリアだかフランスだかで料理の修行をしたそうで、俺が見ても腕は確かなのだが、その割にイマイチ繁盛していない。高いからかな。


カランコロン


などと考えていたら、お客が来たようだ。


「いらっしゃいま……えっ?」

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