令嬢と不良 ~天然お嬢様の危険な恋~
「はい」

“杏ちゃん”というのは杏里さんの事で、俺の事は“松本”と呼び捨てだから、俺とはえらい違いだ。ま、どうでもいいが。


「言うんだろ?」

「さあ……」


俺は栞の事を杏里さんに言うつもりはない。

杏里さんとはなるべく早く関係を断ちたいとは思っているが、それは穏やかに、出来れば自然消滅みたいな形がいいなと思っている。要するに、杏里さんからアパートに誘われても、何か理由を付けて断り続ければいいんじゃないかと思うのだが、それは甘いだろうか……


「おまえ、杏ちゃんに隠すつもりか?」

「別にそういうわけじゃないですけど、俺の勝手ですよね?」


店長が何を言いたいのかは分かったが、俺のプライバシーを侵害する事にムカついた。


「な、何だと……」

「あの、お客さんが来たんで……。店長も厨房で仕事してくださいね?」


俺は、まだ何か言いたげな店長に背を向けて接客に向かった。

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