令嬢と不良 ~天然お嬢様の危険な恋~
「無理、ですか? どうしてですか?」


栞は当然ながらそう聞いてきた。血相を変えて。
そもそも、求人してない所で雇ってもらえるという発想が、全くの世間知らずなんだよな。ましてやこの店じゃ有り得ない。


「だって、見れば解るだろ? ココは小さな店だし大して繁盛してない。おそらく俺や杏里さんの給料を払うのもやっとで、人を増やす余裕なんてあるはずない。あ、杏里さんって、昼間来てる専従の店員さんな?」

「あ、はい……」


“そもそもバイトを探すなら、求人広告を見ないと”って言おうと思ったが、栞の様子がおかしい。

悲しそうな顔で俯いたと思ったら、たちまち目に涙が溜まっていった。


「お、おい。泣くなよ」

「すみませ……ヒック」


参ったなあ。泣かせる気はなかったのだが……

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