令嬢と不良 ～天然お嬢様の危険な恋～

辛うじて終電に間に合い、駅を降りて家に向かって歩いていると、栞から携帯に電話が入った。


『おお、どうした？』

『あの……、ごめんなさい！ 明日、急用が出来ちゃって、それで……』

『デートは中止か？』

『はい、そうなんです』

『そうか。それは残念だな……』


と言いながら、本当に残念に思う気持ちと、ホッとする気持ちの両方が俺の中にはあった。


『あの、明後日の日曜、悠馬さんはご用があるんですよね？』

『ああ、絶対に変更出来ない用なんだ。という事は、デートは来週に延期だな？』

『ごめんなさい……』

『いいって、気にするな。じゃあ、おやすみ』

『おやすみなさい』


俺は通話を終えると、複雑な気持ちでフーッと溜め息をついた。

ちなみに明後日はおやじさんの墓参りだ。おやじさんの実際の命日は、その二日後のクリスマスイブの日なのだが。

俺は、おやじさんの墓参りだけは毎年欠かさずに行っている。