令嬢と不良 ~天然お嬢様の危険な恋~
手に手を取って 栞Side
早川家の人達はゆっくりと立ち上がり、「ご無沙汰しています」と言って私達にお辞儀をした。私は、俊樹さんとはちょくちょくお会いしてるけど、おじさまやおばさまとお会いするのは確かに久しぶりかもしれない。


私達もご挨拶を返し、ソファーに座ると、自ずと私の正面は俊樹さんだった。

俊樹さんは、私がここに来てからずっと笑顔で私を見ている。その笑顔が、初めは怖いと感じ、今は不快に私は感じている。

今まで、私は俊樹さんの笑顔をそんな風に感じた事が一度でもあっただろうか……

なかったと思う。優しいとか爽やかとか、そんな印象しかなかったと思う。

俊樹さんって、こんな顔で笑う人だったろうか。なんか、小馬鹿にされているような気さえする。


各自の前にメイドさんがお茶を配り終えると、


「早川さん、本日はお忙しいところをありがとうございます」


お祖父様の、低くて威厳のあるお声で口火が切られた。おそらくは俊樹さんと私の、縁談話の……

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