令嬢と不良 ~天然お嬢様の危険な恋~
その後は部屋を移って豪華なディナーになった。白いテーブルクロスの上に、メイドやボーイ風の男が高級そうな料理を次々と並べて行った。


栞が言うには、吉田泰造が自分の屋敷からコックをはじめとする使用人の何人かをこの家に連れて来たらしい。メイドもその一人だそうだ。

この家に十分な使用人がいないかららしいが、だとしても吉田泰造の気合いの入れようが窺える。それなのに、来たのが俺で吉田泰造はさぞやがっかりしているだろう。

俺はさしずめ、“招かれざる客”ってやつだからな。


吉田泰造はずっと憮然としたままで、殆ど口を開かなかった。栞の父親もまた、吉田泰造ほどではないが物静かで、時々何かを考えてるような様子だ。おそらくは俺の正体に気付き、娘の心配をしているのだろう。


そんな二人の態度に、栞も母親も戸惑った様子で、全体に暗く重い空気が漂っていた。

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