令嬢と不良 ~天然お嬢様の危険な恋~
歩き出してすぐに、悠馬さんは「あっ」と言って立ち止まった。


「“行こう”とか言いながら、どこへ行くか決めてなかったな?」

「そう言えばそうですね。どこへ行きましょうか?」

「栞はどこへ行きたい?」

「え、私ですか? 私は……どこでもいいですよ?」


私は悠馬さんと一緒にいられるなら、どこでもいいの。


「あ、そう。ん……どこに行くかなあ」


悠馬さんはしばらく考え込み、そんな彼を私は少し見上げながらジッと見ていた。こんな時間も楽しいかも、なんて私は思ってしまう。


「ああ、ダメだ。何も浮かばねえ」

「クス。そうなんですか?」

「笑うなよ。デートなんてめちゃくちゃ久しぶりだからさ……」

「私もです」


正確には“久しぶり”じゃなくて、“初めて”だけれども。

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