令嬢と不良 ~天然お嬢様の危険な恋~
動物園は、真冬のせいか思った程混んでなくて、二頭のパンダは想像したよりも更に可愛らしかった。まるで縫いぐるみが動いているようだと思った。

他にもたくさんの動物を見た。例えばトラを間近で見たのは初めてだけど、あんなに顔が大きくて怖いとは知らなかった。思わず私は泣きそうになり、悠馬さんに笑われてしまった。

悠馬さんは動物の事にとても詳しくて、私が知らなかった事をたくさん教えてくれた。私は、悠馬さんの新たな一面を知った事がとても嬉しかった。



「楽しかったですね?」


動物園を出たところで私は悠馬さんにそう言ったのだけど、悠馬さんのお返事がない。どうしたのかなと思って悠馬さんの顔を見上げたら、遠くの方をジーッと見ていた。

何を見てるのかな、と思って悠馬さんの視線を辿ったら……


「あっ、“通りすがりのお兄さん”だ……」


思わず私はそう呟いていた。なぜなら、悠馬さんの視線の先にあの人がいたから。一昨日、俊樹さんに連れ去られそうになった時、私を助けてくれた男の人が……

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