令嬢と不良 ~天然お嬢様の危険な恋~
「たまたま、ねえ……」

「そうなんです。すごい偶然ですよね!?」


私はその間もキョロキョロと周囲に目を向けたのだけど、ターミネーター似のお兄さんの姿はなかった。


「まあ、そうだな。あ、そうだ。歩き疲れたから、ちょっと休んで行かないか?」

「え? はい、いいですけど?」


私はちっとも疲れてないのだけど、悠馬さんはそうでもないらしい。私は悠馬さんに手を引かれて歩いて行った。どこへ向かうのかは分からないのだけども。


しばらく歩くと、人通りの殆どない細い路地へ差し掛かった。そして立ち止まると、悠馬さんは繋いでいた手をいったん放し、その手で私の肩を抱いた。


恥ずかしくてもぞもぞする私の耳元で、「イヤか?」と悠馬さんは囁き、私は、耳に掛かる悠馬さんの吐息にゾクッとしながら、「ううん」と言った。


「じゃあ、入ろうか?」

「え?」


入るって、どこへ?

< 442 / 548 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop