令嬢と不良 ~天然お嬢様の危険な恋~
感謝と言えば、俺は栞の父親に感謝したいと思った。正確には、栞の父親の暢気さに……
だって、そうだろ?
バイト先に会社の車で栞を迎えに行かせる程、用意周到なくせに、こうして日中とは言え、俺が栞に近付く事を防ごうとしないのだから。
もう俺にはそんな気はないが、もし栞が俺にホテルにでも連れ込まれたらどうするつもりなんだろうか。
と、そこまで考えたところで、それはおかしいと俺は思った。いくら会長の息子とは言え、あんな大会社の社長を務める程の男が、そんな愚かなはずがない。現に迎えの一件では、憎い程に迅速な動きをしたじゃないか。
きっと何かある。そう思った時だった。動物園という場所に、およそ似つかわしくない人物に俺の目が止まった。
その人物は、黒い皮ジャンに黒いスラックスという黒づくしの服装の男で、図体がデカく、おそらく筋肉質な身体の持ち主で、柔道やラグビーの選手を思わせる。髪は短く、一言で言えば、映画の“ターミネーター”みたいな奴だ。
連れはいないようで、だとすれば一人で動物を見に来ている事になるが、どうもそれは考えにくい。
そのターミネーター似の男は、まるで俺の目を避けるかのように、すぐに人混みの中に消えていった。
だって、そうだろ?
バイト先に会社の車で栞を迎えに行かせる程、用意周到なくせに、こうして日中とは言え、俺が栞に近付く事を防ごうとしないのだから。
もう俺にはそんな気はないが、もし栞が俺にホテルにでも連れ込まれたらどうするつもりなんだろうか。
と、そこまで考えたところで、それはおかしいと俺は思った。いくら会長の息子とは言え、あんな大会社の社長を務める程の男が、そんな愚かなはずがない。現に迎えの一件では、憎い程に迅速な動きをしたじゃないか。
きっと何かある。そう思った時だった。動物園という場所に、およそ似つかわしくない人物に俺の目が止まった。
その人物は、黒い皮ジャンに黒いスラックスという黒づくしの服装の男で、図体がデカく、おそらく筋肉質な身体の持ち主で、柔道やラグビーの選手を思わせる。髪は短く、一言で言えば、映画の“ターミネーター”みたいな奴だ。
連れはいないようで、だとすれば一人で動物を見に来ている事になるが、どうもそれは考えにくい。
そのターミネーター似の男は、まるで俺の目を避けるかのように、すぐに人混みの中に消えていった。