令嬢と不良 ~天然お嬢様の危険な恋~
ベッドには悠馬さんが横たわっている。頭の包帯は最近取れたけど、もちろん目は閉じたままで、頬はこけてしまい、お顔は真っ白だ。


「栞さん、あのね……」

「ん?」

「あたしの見間違いかもしれないんだけど……」

「どうしたの?」

「お兄ちゃんの指がね、動いたと思うの」

「えっ? ほんとに!?」


もしそれが本当なら、一歩前進だと思う。今まで、そういう事は一度もなかったから。


「この指がピクってしたと思うんだけど、その後は全然なのよね……」

「そうなんだ……」


私は由紀ちゃんと一緒に、悠馬さんの右手をジーッと見てたけど、動きそうになかった。


「栞さん」

「ん?」

「毎日来てもらって、大丈夫なんですか?」


由紀ちゃんはそう言い、心配そうな顔で私を見つめていた。

< 521 / 548 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop