令嬢と不良 ~天然お嬢様の危険な恋~

悠馬Side

「はあー」


俺は、今日だけでも何度目かわからない、ため息をまたついていた。


「なんだよ、悠馬? 幸せなため息か?」

「違うよ、そんなんじゃねえ」

「じゃあ悩み事か? だったら俺に話してみろよ。この弘司様によ」

「なにが“弘司様”だよ? 自分だってため息ついてたくせに……」

「それはまあ、そうだけどよ……」


弘司はこのところ絵理って女とあまりうまく行ってないらしく、ため息ばかりついていた。それが俺にも伝染っちまったのかもしれない。もっとも、俺にもそれなりの理由はあるのだが。


「弘司。おまえさ、女の前で“僕”とか言うのはやめた方がいいぞ?」

「なんで?」

「嘘くさいからさ。おまえ、裏表がちょっと激しいよな? 特に女の前だと。平気で嘘つくし。そういうところが絵理って子も嫌なんじゃねえの?」

「確かに絵理ちゃんもそんな事を言ってたような……」

「だろ? 何事も正直が一番だと思うぞ?」


今の言葉は弘司にだけでなく、自分に対する言葉でもあった。これからは栞に対し、正直になろうと俺は思っている。


「そうだよなあ。うん、そうするよ、今から」

「それも嘘くせえけどな」

「そう言うなよ。今度は本当だからさ。ところで悠馬、おまえの悩みは何なんだ?」

「俺の悩みか? うーん、どうすっかなあ……」


目下の俺の悩みは栞に関するものなのだが、弘司に話してもどうなるものでもないような……

かなり恥ずかしい話だしなあ。

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