令嬢と不良 ~天然お嬢様の危険な恋~
「何て返事するんだ?」

「うーん、悪いけどおまえの名前を出すよ」

「ちょっと待て。それはダメだ。やめてくれ」

「いいや、書く。ごまかすのは俺の性に合わない」

「ばか、ダメだって……」


弘司の奴は俺の頼みを聞かず、メールを打ち出した。


「おい、“誰かはお楽しみに?”とか、方法はあるだろうが?」

「ふん。小賢しい……」

「頼むから、俺の名前だけは伏せてくれ」

「やだね」

「おい……」

「うわっ」


俺と弘司はちょっとした揉み合いになり、そのはずみで弘司の手から携帯がすべり落ちてしまった。


ゴン、コン、コン、コン……


弘司の携帯は石の階段に落ちて嫌な音を発し、更に弾みながら階段を落ちて行った。弘司は慌てて拾い上げたが、


「おーい、壊れちまったよ。どうしてくれるんだよ、ったくよ……」


と、情けない顔で言った。弘司には悪い事をしちまったなあ。

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