美容師男子×美麗女子
「千咲・・・だよ、な?」
千尋の気まずそうな声が後ろからする。
お願いだから、この場からすぐに立ち去りたい。
「千咲?」
「誰、それ」
「え」
「あたしはそんな名前じゃない」
「いやでも」
千尋の手を解こうにも、指がかじかんでて上手く力が入らない。
ぐる、とすごい力で体を反対側に向かされた。
「やっぱり千咲だ」
バランスを崩して、靴が脱げた。
「顔は全く別人だと思ったけど、俺がしたネイル」
千尋はあたしの指を見て、嬉しそうに笑った。
「・・・・・・なんで千尋がここに居るのよ」
「そこのコンビニ、行こうとして」
千尋がコンビニを指で指す。
あぁ、そんなこと頭に入らない。
どうしよう、どうしよう。なんて言えばいいんだろう。
「お前、寒そう」
「・・・・寒い」
あたしは千尋を睨んだ。
もう、何も言葉も出てこない。