美容師男子×美麗女子


風呂場に入って、ゆっくりとシャワーを流した。

温かいお湯を体に流して、とりあえず全身浴びる。


「う、わ」


足元に視線を落とすと、スレンレスの棚にはぎっしりとシャンプーやコンディショナーが並べられていた。

さらに見てみると、何に使うのか良く分からない、おしゃれな入れ物がたくさん置いてある。

なんなんだ、この家は。まるで美容室みたいだ、って美容室なんだけど。


あたしはしゃがみこんで、取り合えずクレンジングを手に取る。

クレンジングだけでも数種類あって、どれが何なのか分からないくらい。


メイクを落とさないと。

肌にも悪いし、きっと誰だか分からないから。


メイクを落とした後に、これもまた豊富な種類のシャンプーで髪を洗った。

スプレーやワックスが流れ落ちる。


千尋の家のシャンプー、全部すごい良い匂い。

全部試したいくらい、お洒落だし。


冷えていた体がどんどん温まる。

こんがらがっていた頭も、少しはましに回転するようになってきた。

一旦シャワーを止めて、あたしはとりあえずお風呂場から出ることにした。


真っ赤なドレスの上に、黒色のスウェットが置かれている。

千尋が置いてくれたんだ。

こんなに全てやってもらって、いいのかな。


タオルで体を拭きながら、千尋のスウェットを抱きこむ。

甘い千尋の匂いがした。

心が落ち着くような、甘い匂い。


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