美容師男子×美麗女子
「流れてるね」
「流れてるだろ」
肩に上品にかかる巻き髪が、なんとなくそれっぽさをだしている。
今日はクリスマス。
お店1番の、稼ぎ時。
あたしはいつもよりも早く、午後5時に出勤することになっている。
「ありがとう。多分、これ夜まで持つよね」
「もっと固めとく?」
「いや、大丈夫」
手鏡で髪型を覗き込む。
うん、さすがは千尋と言った所かな。
「で、なんでそんなに期待に満ち溢れた目をしてるの」
「千咲、メイクするんだろ?」
あたしは思わず眉をしかめた。
「・・・・・・・メイクしたいわけ?」
千尋は満面の笑みで、あたしの手を握った。そして、もう1度革椅子に座らされた。
あの日から千尋とあたしは何の進展もなく、キスしたことは無し、な雰囲気になっていた。
まぁ、そっちの方がやりやすいし、千尋とも居やすい。
きっと、あたしはあの時無防備すぎたんだ。迂闊だったかな。
「あのさぁ、遊びじゃないんだから、こっちは。今日は大事な日だし」
「分かってるって。俺も練習したから」
「・・・・まぁ、いいけど・・・・・・・」
千尋のぬるい指が、あたしの頬を触った。