美容師男子×美麗女子
今日は、徒歩。
あたしは自転車置き場を無視して、まっすぐ歩く。
自転車で登校したけど、ゆっくり帰りたいから、下校は徒歩。自転車は学校に置いていく。
この間まではあんなに暑かったのに、シャツ1枚じゃもう寒いな。
校庭の木も葉っぱがオレンジに染まっている。
もうすぐ冬かぁ。
私を追い抜いていく自転車、手を繋いで横を通っていくカップル、急ぎ足で自分の家に向かう3年生。
それをぼんやり眺めながら、あたしはゆっくりゆっくり足を踏み出す。
女の子なんて、みんな嘘でできてるんだ。
横を通り過ぎていったあのかわいい彼女だって、きっと好きで彼氏と付き合ってるんじゃない。
自分を目立たせるため、強調させるため、周りより優れてるんだよって見せびらかすため。
女の子は頭がいいから、嘘をつく。
嘘に嘘と嘘と嘘と嘘を重ねて、“最高の姿の自分”をつくっていく。
もちろん、あたしだって。
でも、別にそれは悪いことじゃないと思う。
だって、今よりいい自分になるためには、多少の嘘は必要不可欠だもん。
ただ、嘘で固めた自分をどう思うか、ってはなし。
あたしはポケットから音楽プレイヤーを取り出して、イヤホンを耳にさしこんだ。
ゆっくりと流れ出した、大好きなジャズを口ずさみながら、それに合わせてゆっくり歩く。