美容師男子×美麗女子
左目も同じようにラインを引いて、あたしは目を開いた。
「本当に引けてるの?」
「引けた引けた。俺、上達してるから」
「見せてよ」
「まだ」
手鏡をくれない千尋を睨んで、あたしは諦めた。
まぁ、千尋に任せよう。
マスカラを塗って、千尋が器用につけまつ毛をつける。
人のまつ毛なんて、怖くて触れないな。
そのまつ毛は意外にもドーリーなもので、目尻に毛束が集中してた。
「おお、それっぽくなってきた」
千尋はさっき塗ったシャドウの上に、また色を重ねて、さらに濃くする。
うん、そこらへんはよく分かってるみたいだ。
「千咲、目閉じて」
「はぁ?なんで?」
「いいから。目開けるなよ」
「・・・・・・・わかったけど・・・、」
千尋の指示に従って、あたしは目を閉じた。
千尋の自然なつけ方のおかげで、付けまつ毛の付け心地は最高だ。
なんで、あんなに上手いんだろう。
千尋の指があたしの顎を掴んだ。
あぁ、口紅か。それにしても、なんで目を閉じる必要があるんだろう。
リップのフタを外す音がして、唇に生温かいものが当たる。
その後に、冷たい感触が唇を撫でた。
千尋は何色を選んだんだろう。