美容師男子×美麗女子
現在、午後18時。
記念すべき聖なる夜、あたしをご指名のお客様1人目は、アキラだった。
その整いすぎた顔を見たとき、あたしは不覚にも「げっ」と思ってしまった。
「メリークリスマス、アヤカ」
「メリークリスマス」
とりあえず“アヤカ”の可愛いスマイルを作って、アキラを席に誘導する。
「アヤカは赤が似合うね。今日は誰よりも目立ってるよ」
「本当?アキラに褒められると、うれしい」
ソファに座ってさっそく肩を抱かれ、鳥肌が立つ。
あの日以来アキラに苦手意識を抱いてしまう。
一晩一緒に寝た相手と普通に会話ができるほど、まだ大人になれない。
だから、ちょっと苦手だ。
「今日はお持ち帰りアリなの?」
耳元で囁かれた科白に、ぞくりとした。
ここですっぱり断ってしまってはいけない、とカオリさんに教わった事がある。
「ん、まだわかんない・・・。お仕事が終わったら、話しよう?」
「分かったよ。待ってる」
アキラはあたしに笑いかけて、「乾杯」とグラスを上げた。
あたしもそれに合わせてグラスに口をつける。
口内を洗うような炭酸と、口いっぱいに広がる苦味が丁度いい。
「アキラ、今日お仕事はどうしたの?」
アキラは仮にもホストをやっているはずだ。
クリスマスっていう稼ぎ時シーズンになんでこんな所にいるんだろうか。