美容師男子×美麗女子
「また来てください」
斉藤さんは勘定を済ませて、行ってしまった。
あたしは笑顔を壊して、すぐに眠たそうにしている店長に詰め寄る。
「店長、他につくお客様、いないですか?」
「あー、どうしたの?やる気あるねー。残念ながら今年は家族持ちのお客さんが多くてね。長居するお客さんが居ないんだよ。そろそろお帰り時」
店長は後ろからお客さんが帰ってくるのを見ると、すぐに営業スマイルを作って「またお越し下さい」と頭を下げた。
「いいよ、もう帰っても。他の子にも伝えておいて」
それを聞いていたアミが「はーい」と手を挙げて、みんなを連れて去っていった。
「店長、どうしても今接待したいんですが」
「だからさ、今は指名オンリーのお客様だけだから。何でそんなやる気なの」
店長は苦笑して、あたしの前から居なくなった。
あたしは肩を落として、窓の外を見る。
やっぱり白のフェラーリは待っていた。
「アヤカ、お疲れー。この後予定入ってるの?」
「・・・・・・入ってない・・・はず」
「彼氏いるんでしょー?隠さなくてもいいのにー」
アミがあたしの脇腹を肘でつつく。
今のあたしは、それどころじゃないんだ。