美容師男子×美麗女子


「アミはさ、お客さんからの出張を要求されたらどうやって断る?」

「はー?断らないよ。だって、都合が悪い時ははじめに伝えてるもん。でないと失礼だしね」

「やっぱり、最初に言わないとだめ?」

「うん、でも曖昧なのが1番だめだよね」


アミは自分の顔をチェックしながら、先輩ぶった口調でこう言った。

「子供はできないようにね」

年齢なんてそんなに変わらない、頭はあたしより悪いアミがなんでこんなに先輩ぶってるんだろう。

まぁ、それも今考える事じゃない。


「じゃあ、お疲れー」

アミと続いて他の子も次々と帰っていってしまう。

そんな、馬鹿な。今日はクリスマスなのに、なんでこんなに客が少ないんだ。

カオリさんがあたしの肩に手を置いた。


「アヤカ、貴女が何を思っているのかは知らないけど、お客様に恥をかかせるようなことはしちゃだめよ」

「・・・・・4時間くらい待っててもらってるんですけど、やっぱり断るのって」

「有り得ないわよ」


カオリさんは年齢が分からないくらい綺麗に、だけど悪魔のようににっこりと微笑んだ。

そのまま、「お疲れ」と言って帰ってしまうカオリさん。


あたしは溜め息をついて、頬を軽く叩いた。

仕方無い。ちゃんと断らなかったあたしが悪いんだ。

メイクを直して、髪も整える。

よし、ヤるか。

下品だったかな。だけど、事実だし。


「お疲れ様でした」


店長に頭を下げて、外に出た。

冷たい空気が一気にあたしの火照った体にしみて、心地いい。


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