美容師男子×美麗女子
あたしの姿を確認したのか、アキラは車から出てきた。
真っ白な外車から不釣合いな、灰色のスーツ。
「ごめん、まさか待ってくれてるとは思わなかった」
「どうしてもアヤカに会いたくて。ごめん」
アキラはあたしの肩を抱いた。
そんな馴れ馴れしく触らないで欲しいけど、言わない。
仮にも、お客様だ。
「・・・今日、いい?」
耳元で囁かれた言葉に、鳥肌が立った。
断るわけにはいかない。
だって、プライド高い下品な男を立たせてやるのは仕事だ。
「うん」
あたしはアキラの車に乗り込んで、助手席の窓に肘をつきながら、景色を眺めた。
そうだ、今日はクリスマスなんだ。
小学生の時とかは、よくサンタさんサンタさんって騒いでいたような気がする。
6年生の時に、サンタさん来なくなっちゃったけど。
サンタ、トナカイから落ちて両足骨折しちゃったのかな。真剣で母に聞いたことがあった。
流れる都会の景色は、深夜だというのにクリスマス一色だった。
車から降りて、あたしはアキラに肩を抱かれてホテルに入った。
外との温度差がありすぎて、逆に気持ち悪い。
「アヤカ、行こう」
「うん」
そう、あたしはこのときまだ、アキラが嗤ったことに気付かなかったんだ。