美容師男子×美麗女子
「千咲ちゃん、知らない?」
「え、何が?」
どこの女子もあたしと同じように身をかがめて、先生と見つからないようにひそひそ話をしている。
「3年生の先輩が、学校に帰ってきたの」
「帰ってきた?」
「そう。その人、普段は忙しいから学校に通わない人で、来るのはほんのたまになんだって。その人が3学期からは出席埋め合わせのために来るのよ!」
興奮気味に彼女は説明してくれた。
だけどいまいち、理解できなかった。
「そんな人、居た?と言うか、3年生だよね、大丈夫なのかな」
「だから3学期からは通うんだよね!卒業できないかもしれないから」
「でもさ、3年生は3月に卒業じゃん。絶対、出席足りないよ」
「成績はいつもトップで、特待生だからそこは大丈夫なんじゃないかな?」
ごほん、と学年主任が咳払いをした。
体育館中の女子が一斉に喋るのをやめる。
ごめんね、とばかりに顔を歪める前の子にお礼を言って、あたしは1人考えこんだ。
そうか、特待生だと出席が足りて無くても卒業できるのか。いいなぁ。
ガラリと勢いよく後ろの扉が開いた。
体育館の立て付けの悪い大きい扉は、どうしても大きい音が出てしまう。
だけど、もっと控えめに開けることはできたはずだ。
一体、どれだけトイレ我慢してた人が・・・・
あたしが後ろを振り向いた瞬間、女子の歓声に気圧された。
「キャー!!!!」
みんな首を伸ばして、後ろを見ようとする。
一体、なんなんだろう。