美容師男子×美麗女子


「千咲ちゃん、知らない?」

「え、何が?」


どこの女子もあたしと同じように身をかがめて、先生と見つからないようにひそひそ話をしている。


「3年生の先輩が、学校に帰ってきたの」

「帰ってきた?」

「そう。その人、普段は忙しいから学校に通わない人で、来るのはほんのたまになんだって。その人が3学期からは出席埋め合わせのために来るのよ!」


興奮気味に彼女は説明してくれた。

だけどいまいち、理解できなかった。


「そんな人、居た?と言うか、3年生だよね、大丈夫なのかな」

「だから3学期からは通うんだよね!卒業できないかもしれないから」

「でもさ、3年生は3月に卒業じゃん。絶対、出席足りないよ」

「成績はいつもトップで、特待生だからそこは大丈夫なんじゃないかな?」


ごほん、と学年主任が咳払いをした。

体育館中の女子が一斉に喋るのをやめる。


ごめんね、とばかりに顔を歪める前の子にお礼を言って、あたしは1人考えこんだ。

そうか、特待生だと出席が足りて無くても卒業できるのか。いいなぁ。


ガラリと勢いよく後ろの扉が開いた。

体育館の立て付けの悪い大きい扉は、どうしても大きい音が出てしまう。

だけど、もっと控えめに開けることはできたはずだ。

一体、どれだけトイレ我慢してた人が・・・・


あたしが後ろを振り向いた瞬間、女子の歓声に気圧された。


「キャー!!!!」


みんな首を伸ばして、後ろを見ようとする。

一体、なんなんだろう。


< 123 / 210 >

この作品をシェア

pagetop