美容師男子×美麗女子


「千咲ちゃん!あの人、あの人よ!この学校のアイドル!」

「え?誰、誰」


もう集会なんてぶち壊し、みんな寄ってたかって列から飛び出そうとする。

先生達の怒鳴り声と、男子の笑い声が体育館中にこだました。


あたしもその人を見たいけど、女子達に阻まれてみる事ができない。

もういいか。そこまで興味があるわけじゃないし。


先生達が激怒して、騒ぐ子達を列に戻す。

数十分かけて、ようやく体育館は静かになった。

いやでも、すごい先輩だなぁ。あんなに人気なんだ。


それからの集会は、全くみんなの耳に入らず、ざわざわしたままで終わった。


「これで始業式を終わります、2年生から順番に先生の指示に従って教室に戻ってください」


みんな素早く一斉に立ち上がって、体育館から駆け出した。


「何?何があるの?」

「みんな、先輩の顔が見たいんだよ!廊下で待てば見れるかもしれない!」


友人があたしの手をつかんで、人混みを掻き分けて廊下に辿り着いた。

そうか、朝から興奮していたのはこの先輩のことだったのか。


「キャー!!もうすぐ会えるのよ!」


体育館側の女子から歓声が沸き起こる。

どんどんその声が近くなって、あぁ先輩が近付いたんだなってことが分かった。


「どうしよう千咲、あたし怖くなってきた」

「なんでよ・・・」


つい、呆れた目で友人を見てしまった。

怖くなるのか、先輩ごときで。



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