美容師男子×美麗女子
「来た来た!キャー!!」
友人はあたしの肩をばしばしと叩く。
そこからはスローモーションだったように感じる。
女子に囲まれたロードをゆっくり歩く人、その人の周りには誰もいない。避けるかのように。
歓声に包まれるのかと思ったら、意外にもみんなは声が出なかった。
ただあたしだけ、青ざめた顔をしていたんだった。
彼は美しい顔で、あたしに微笑んだ。
「おはよう」
彼は立ち止まって、みんなに挨拶をして、王子のように去っていった。
あたしとだけ数秒、ねっとりと視線が絡んだ。
それから、歓声が上がったんだ。
今は後姿しか見えないけど、あたしの心臓は嫌な音を立てている。
がくりと膝が地面に着いた。
「どうしたの?千咲ー!感動しすぎちゃった!?」
「う、うん・・・・・かっこいいよね、本当」
なんで、あいつなんだ。
そう、彼はアキラだった。
「彰せんぱーい!!」
そうか、名前を知らなかった。アキラは彰って言うんだ。
源氏名も、本名も同じにするなんて、よっぽどの自信家なのか。
しばらくあたしは、動けないでいた。