美容師男子×美麗女子
「しかし、仕事してるときの顔と今の顔、全然違うね。ちょっと幼い」
「うるさい」
あたしはもう1回彰を睨んで、すぐにその場から離れようとした。
冷たい手が、あたしの手首をつかむ。
「まだ、話したいこといっぱいあるんだけど」
そう言って、いつもの王子スマイルであたしの顔に突きつけたのは携帯だった。
画面に映し出されている、女。
「っ、なにこれ!」
もう1度よく確認しようと思って、あたしはその携帯を彼の手から取り上げようとした。
だけど彰はすぐに手を上げて、あたしが届かない高さまで持っていった。
「なんだと思う?」
あたしはその高さから、彰の携帯を見上げた。
「みんなが来るから、今日はここまでで。明日からよろしく、“千咲”ちゃん」
あたしの髪を一束手にとって、さらりと指で梳かして、彰はあたしに背を向けた。
それに何も言えないで居た。
どうして。
なんで。
彰の携帯に映っていたのは、紛れも無いキャバ嬢のあたしだった。
ざわりと胸騒ぎがした。