美容師男子×美麗女子
「す、すいませ・・・・・」
私が見上げたのは、同じ色の制服を着ている男子高校生だった。
その人はあたしの顔を見て、何も言わなかった。
「あぁ、ごめん。俺の不注意だった。怪我、ない?」
「はい、ないです」
蒼い信号が点滅した。
適当に謝って、早く横断歩道を渡りきろうとした、その時。
「痛っ、」
横の髪が勢いよく引っ張られて、あたしはその場で止まった。
「あ、あー・・・・・。ちょっと、こっちに行こうか」
「は?・・・・え?」
なぜかあたしはそのまま腕を引っ張られて、横断歩道を渡ったところまで連れて来られた。
「・・・なんですか?」
「いや、髪が。絡まってる」
その人はあたしの肩を掴んで、自分の方に向かせた。
あたしは指差されたその人の胸辺りを見る。
黒色のブレザーに金色のボタン。
そのボタンに、あたしの黒髪はしっかりと絡まっていた。
「ご、ごめんなさい!あ、ちょっと待ってください、今ハサミ持ってるんで・・」
あたしはなんとしてでもその場から立ち去りたくて、カバンから筆箱を取り出そうとした。
片耳にぶら下がってたイヤホンをポケットに突っ込んで、急いでカバンをあさった。