美容師男子×美麗女子
千尋の話も耳から耳に流れていって、ろくに頭に入らないまま教室で別れた。
学校がこんなにも憂鬱だと思ったのは初めてだ。
前は少しでも長く学校に居たいと思っていたのに。
あぁ、気が抜けない。
「千咲、おはよーう!今日も彰先輩、いるね」
「うん、朝、見かけたよ」
「うわー!超ラッキーじゃん千咲!うらやましい」
友人があたしの机に座る。
彼女たちにとって、そんなに彰は憧れの存在なんだろうか。
あたしはそいつ1人のおかげで、こんなにも心臓がすり切れそうな思いをしているというのに。
学校、早く終われ。
「千咲、俺のこと避けてるでしょ」
「・・・・・そんなことないですよ」
移動教室の5限目に、あたしは彰と鉢合わせてしまった。
相変わらず彰は余裕そうで、口元に薄ら笑みを浮かべている。
「2人の時は敬語じゃなくてもいいんだよ」
「いえ、結構です。先輩なんで」
「昨日と態度違うな」
授業開始3分前の予鈴が鳴った。
3年生は進路説明で体育館に集合している。