美容師男子×美麗女子


千尋の話も耳から耳に流れていって、ろくに頭に入らないまま教室で別れた。

学校がこんなにも憂鬱だと思ったのは初めてだ。

前は少しでも長く学校に居たいと思っていたのに。

あぁ、気が抜けない。


「千咲、おはよーう!今日も彰先輩、いるね」

「うん、朝、見かけたよ」

「うわー!超ラッキーじゃん千咲!うらやましい」


友人があたしの机に座る。

彼女たちにとって、そんなに彰は憧れの存在なんだろうか。

あたしはそいつ1人のおかげで、こんなにも心臓がすり切れそうな思いをしているというのに。


学校、早く終われ。





「千咲、俺のこと避けてるでしょ」

「・・・・・そんなことないですよ」


移動教室の5限目に、あたしは彰と鉢合わせてしまった。

相変わらず彰は余裕そうで、口元に薄ら笑みを浮かべている。


「2人の時は敬語じゃなくてもいいんだよ」

「いえ、結構です。先輩なんで」

「昨日と態度違うな」


授業開始3分前の予鈴が鳴った。

3年生は進路説明で体育館に集合している。


< 130 / 210 >

この作品をシェア

pagetop