美容師男子×美麗女子


「・・・・・・・どうするつもり」


それを奪おうとして、あたしは手を伸ばす。

器用に彰はそれを避けて、馬鹿にするみたいに笑った。

抱えていた数冊の教科書が床に派手な音を立てて落ちる。


「別に、どうもしないけど」


鼻歌交じりに彰はその場にしゃがみこんだ。

綺麗な目が、あたしを見上げる。


「俺、千咲好きだよ」

「あたしは好きじゃない」

「あー、やっぱり?」


彰があたしのスカートの裾を引っ張るから、その手を払い除ける。

足を動かす時に、ぐしゃ、と教科書の表紙を踏んでしまった。

見事に滑って、あたしはその場にお尻を打ちつけた。


「っ、・・・・・・」

「恥ずかし」

「うるさい」


立ち上がろうとしたけど、それは阻まれて。


「千咲は、今何歳なの?」

「あたしは留年してない」

「じゃあ、17歳か」

ぐい、と彰があたしの肩に体重をかけた。

「うわ、ちょっと、!」


あたしはそのまま頼りなく、べしゃりと寝転んでしまう。

あぁ、こういうのを押し倒されたって言うんだ。

なんて自然にこの男はそれをやってのけるんだろう。


< 132 / 210 >

この作品をシェア

pagetop