美容師男子×美麗女子


「いいよ、そういうの、そそる」


血が滲む舌を出しながら、彰は薄く笑った。


「ふざけないでよ、ここ、学校だし」

「場所なんて、関係ないでしょ」


そう言う彰の舌からは、あたしの予想している何倍も多く出血している。

彰の唇の端から赤が見える。

少しの罪悪感と、劣等感に苛まれる。


「・・・・ご、めん」

あたしは彰の頬を触りながら、とりあえず謝罪だけは言ってみた。

彰は少し意外そうに目を開いて、そしてあたしから離れる。


「謝っちゃうところが、意思の弱さだよね」

「は・・・・・」


体を起こして、乱れた髪を整える。

彰は床に座り込んだまま、あたしをじっと見ていた。


「ねぇ、千咲」

「・・・・・なに」

「俺は、本当にキミのことが気に入ったみたい」


教科書を拾う手が止まる。

一瞬、彰の迫力に呑まれそうになった。


「なんで・・・」

「だってキミは、他の子と違う」


彰の指があたしの髪を梳く。

千尋の指よりも太くて、まだ男らしい。

少し違和感があった。


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