美容師男子×美麗女子
3年生の教室に目が行った。
移動教室の通り道にだけあって、人がいっぱいいる。
その中で最も目立っている彰に、どうしても目が行ってしまう。
「あ、彰先輩だー」
ちょっと見ていこうよ、と楽しそうに喋る友人の意見に反対して、あたしはそのまま歩き出そうと思った。
もたもたと言い争いをしていたら、声が大きかったのか、彰と目が合ってしまう。
彰はあたしに気付くと王子のように微笑んで、そして視線を逸らした。
今の笑顔は私だよねと友人がうるさく興奮している。
「俺、いい画像持ってるんだ」
一直線に耳に飛び込んできた彰の声に、あたしは動きが止まった。
彰が携帯を持っている。
勢いよく彰をほうを振り向いて、楽しそうに友達2人で喋っている彼を睨んだ。
彰は知ってか知らずか、あたしの方を一切見ない。
「え、なになに?」
「まじであれはお前でも絶句しちゃうって」
「おい彰、超気になるじゃん」
「すっげーえろいやつ」
わざと声を大きくしてるのか。
こんな放課の人ごみの中でも、彰の声がはっきり聞こえる。
固まったままのあたしを見て、彰は妖艶に微笑んだ。
ぞくり、と全身に寒気が走った。
まさか、まさか、まさか。