美容師男子×美麗女子
「え、なに彰、お前千咲ちゃんと付き合ってんの?」
「まぁ、そういうことかな」
その人が口を押さえた。
後ろに居たあたしの友人も、教科書を床に落とす。
ざわり、とその場の空気が変わった気がした。
「嘘でしょ、あの彰先輩が」
「なんてカップルなんだ」
「好きだったのに」
「彰、彼女作ったんだ」
あたしと彰に痛いくらいの視線を突き刺す野次馬。
そんな圧迫感に、あたしは耐えられそうになかった。
「お前、女は好きだけど彼女は作ったこと無いんだもんなー!千咲ちゃんが本命だったのか」
あぁ、彰のお友達さん、その台詞はいらなかったかな。
「彰の本命だってー!!」
3年生の教室につながる廊下は、人でいっぱいだった。
あたしの耳に聞こえたのは、女の子の悲鳴と怒号だった。
あたしが分かったのは、彰の口車に乗せられたってことだった。
怖くなって、あたしの手先は震え始めた。
何か、とんでもない地雷を踏んでしまった気がする。
「あ、ちょっと、彰、」
肩をつかまれて、あたしの背中は壁にはりつけられる。
息をする間もくれないで、彰はあたしにキスをした。
びっくりして彰を押したけど、彰はキスをやめないで、舌を侵入させてくる。
うそ、でしょ。
あたしは切実にそう思った。