美容師男子×美麗女子


一瞬でその場は静かになって、聞こえるのは衣服の擦れる音くらい。

血の味がした。

この前、あたしが咬んでしまった傷が残っているんだろうか。


「・・・・怯えちゃって、可愛いね」


唇の先でそう囁いた彰の手には、携帯。

その画面にはあたしが想像してたのとは全く違う、グラビアアイドルの画像だった。


あたしの、画像、じゃない。


そのまま彰はあたしの肩を抱いて、野次馬をくぐりぬけると、使われていない準備室にあたしを押し込んだ。


「もう、従順だね」


甘く囁かれた彰の声が脳内でこだまする。

あたしは力なくその場にへたり込んでしまった。


「キミが、勝手に怯えたんだ。もしかしたら、自分の写真なんじゃないかって」


広まってほしくないから、自分からわざわざ捕まりに行くようなことをしたんだ。


「・・・・・・・こんなの、脅しだ、」

「物騒なこと言わないでよ。俺はいつあの画像を広めるなんて言った?千咲の勝手な思い違いだろ?」


彰もあたしとの視線を合わせた。

その指があたしの髪を梳く。


「脳に植えつけたんでしょ?自分の弱みを握られてるって」

「ちがう、」

「じゃあ、一言も“千咲の写真”なんて言ってないのに飛び出してきたのはなんで?」


ぽん、と彰の手があたしの肩に置かれた。


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