美容師男子×美麗女子


「キミはただ怖いだけなんでしょ?安全に学校生活を送りたいから、それを壊されるのが怖くて。つまり、ただの臆病者」

「知ってる!だから、それが何?あたしは彰みたいに目立とうとしないし、目立ちたいとも思わないの。早く卒業できればそれでいい」

「何それ、つっまんない」

「・・・・・・・・彰は特待生なんでしょ?なんで留年なんてしてんの」


へらりと彰は笑って見せた。

その仕草ひとつひとつが綺麗で、毎回腹が立つ。


「留年ー?出席日数足らないだけ。だって俺、学校好きじゃないし」

「それだけ?」

「まぁ、うちの学校は同じ学年2回までしかできないんだけどね」


馴れ馴れしく彰があたしの頬を撫でる。

それを振り払って、睨んだ。

油断も隙もつけない男だ。


「化粧だけで、人ってあんなに変わるんだね」

「悪かったわね、幼くて」

「俺、アヤカ見た時、22って信じ込んでたもん。年上だと思ってた」


ずるずると引っ張られて、強引に膝の上に乗せられる。

一瞬で下りようと思ったけど、お腹に回る腕がほどけなくて諦めた。

彰の香水の匂いが鼻をつく。

彰があたしの首元に顔を埋めたのが分かった。


「始業式のとき、一瞬で千咲がアヤカだってこと、気付いた」

「・・・・・は?」

「顔は全然違ったけど、雰囲気はアヤカと一緒なんだ」


首筋に寄る彰の顔を軽く引っ掻く。

彰は笑って離れた。


< 143 / 210 >

この作品をシェア

pagetop