美容師男子×美麗女子
「キミはただ怖いだけなんでしょ?安全に学校生活を送りたいから、それを壊されるのが怖くて。つまり、ただの臆病者」
「知ってる!だから、それが何?あたしは彰みたいに目立とうとしないし、目立ちたいとも思わないの。早く卒業できればそれでいい」
「何それ、つっまんない」
「・・・・・・・・彰は特待生なんでしょ?なんで留年なんてしてんの」
へらりと彰は笑って見せた。
その仕草ひとつひとつが綺麗で、毎回腹が立つ。
「留年ー?出席日数足らないだけ。だって俺、学校好きじゃないし」
「それだけ?」
「まぁ、うちの学校は同じ学年2回までしかできないんだけどね」
馴れ馴れしく彰があたしの頬を撫でる。
それを振り払って、睨んだ。
油断も隙もつけない男だ。
「化粧だけで、人ってあんなに変わるんだね」
「悪かったわね、幼くて」
「俺、アヤカ見た時、22って信じ込んでたもん。年上だと思ってた」
ずるずると引っ張られて、強引に膝の上に乗せられる。
一瞬で下りようと思ったけど、お腹に回る腕がほどけなくて諦めた。
彰の香水の匂いが鼻をつく。
彰があたしの首元に顔を埋めたのが分かった。
「始業式のとき、一瞬で千咲がアヤカだってこと、気付いた」
「・・・・・は?」
「顔は全然違ったけど、雰囲気はアヤカと一緒なんだ」
首筋に寄る彰の顔を軽く引っ掻く。
彰は笑って離れた。