美容師男子×美麗女子
「千咲」
びくりとして後ろを振り返った。
黒いカーディガンに、くしゃくしゃの髪の毛。
白くて細い彼は、千尋だった。
「なんだ、千尋か」
「なんだって何だよ、おはよう」
「うん」
心が落ち着いた。
1人で居たらおかしくなりそうだった。
それに、周りに流されない千尋の能天気なところも、今は安心できる。
「今日、バイトあんの?」
「ある」
「俺がメイクしても?」
「うん、よろしく」
千尋は笑って、了解とだけ呟いた。
「授業終わったら、千尋のクラス行く」
「あぁ」
千尋が頷いて、口を開きかけた時。
あたしの肩は勢いよく引き寄せられた。
慌てて引っ張られたのほうを見ると、今日も王子全開の彰だった。
香水の香りが鼻を擽る。