美容師男子×美麗女子
「おはよう、千咲」
「お、はようございます」
馴れ馴れしく肩に手を回して、あたしの髪をすくう。
「あ、ちょっと」
「先行こうよ」
ぐいと引っ張られて、彰は千尋を置き去りにしたまま、あたしを連れ去るように歩いた。
平然と、何も無かったかのようにあたしに喋りかける彰に腹が立った。
彰を押し返して、上靴をだらだら履いている千尋の横に戻る。
「・・・・・千咲?」
「先輩の横にいると、目立つんで遠慮しておきます」
作り笑いを用意して、千尋を引っ張りながら彰の横を通り過ぎようとした。
香水の匂いから、爽やかな整髪剤の匂いが鼻を擽る。
「何?あの人」
「聞いて、あの人・・・・・・」
今まであったことを、千尋になら話していいと思ったけど、あたしの髪は引っ張られた。
「千咲、わかってんの?」
ちょっと笑って、そのままあたしとは反対方向に歩き出した彰。
背筋に寒気が走って、さっきの言葉に含まれた毒を知る。
「何?千咲」
「いや、なんでもない」
千尋の不愉快そうな目が向けられる。