美容師男子×美麗女子
心地良いソファに座らされる。
何も言わないで、そいつはあたしの肩に布みたいなのをかけて、鼻歌なんてうたって、どこかへ行ってしまった。
あたしは辺りを見渡す。
そいつは、“俺の家”って言った。
だけど、そこはどこからどう見ても、いわゆる“美容室”だった。
目の前に大きい鏡、背凭れがある大きい椅子、それが何台か。
ちょっと薄暗くて、作りはオシャレだけど、どこか不思議な雰囲気を漂わせる空間。
「おー、お待たせ」
振り返る。
そいつは黒いエプロンを後ろで結びながら、笑っている。
「・・・・・・なに、ここ」
「俺の家。ちょっと雑に切っちゃったからさ、毛先くらいは揃えてやろうかなって」
腰に何本ものハサミをさして、そいつは自分の髪を後ろでまとめた。
「あたしの髪、切るの?」
「切るっていうか、もう切っちゃったからな。それのフォローをするだけ」
ぐるりと椅子を回転させて、あたしと鏡を向き合わせた。