美容師男子×美麗女子
あたしはすぐに学校から出ようとした。
目の奥が熱くなって、喉から嗚咽が漏れそうになる。
あぁ、またやってしまった。あたしはこれで、学校中の嫌われ者だ。
「あれ、せんぱい、まだまだあいつのこと掴めてないみたいっすね」
はっとして振り向いた。
千尋の声だった。
女の子みたいに白い千尋が、細長い指で自分の右頬を皮肉っぽくつついてみせた。
彰の右頬はあたしの手形がついてて、真っ赤だった。
千尋からの嫌味を食らうと、彰は不機嫌そうに眉を寄せた。
靴を履き替える千尋を見て、目から熱いものが込み上げそうになった。
「ちひ、」
千尋の生温くて白い指が、あたしの目を片手で覆い隠す。
それから肩を抱かれるように、学校を出た。
爽やかで甘い匂いは、あたしの涙腺を崩壊させた。
「馬鹿、何泣いてんだよ」
「なんで千尋が居るの」
細い指をどけて、あたしは千尋を見上げた。
困ったように笑っている千尋は、苦笑する。
「千咲が、ただならぬ顔で廊下歩いてるの見えたから。なんかあっただろうなって」
溢れた涙を拭いて、あたしは笑って見せた。