美容師男子×美麗女子
「なんかもう、よくわからないわ」
「まぁ、そういう時もあるわな」
ぽんぽんとあたしの頭を軽く叩いて、千尋は笑った。
「ごめんね、すぐに帰ってきたんじゃ学校に行った意味なかったね」
「いいって。面倒だったし」
舌を出して千尋は顔をしかめ、「今日体育、持久走だから」と呟いた。
そんなしょうもない理由を教えてくれた千尋に安心した。
「クラスのヤツに聞いた。あの先輩と付き合ってるんだろ?」
「本当は付き合ってないけど」
「あぁ、そうなの?」
「あとで話すよ。あの先輩、ハタチ超えてるって知ってた?」
「うわ、まじ?」
千尋が呆れたように笑う。
そこについては全く同感だった。
「成績優秀なんだろ?何で何年も留年してるんだよ」
「出席足りないんだって」
「勿体ない」
「あたしもそう思う」
自然とさっきまでの緊張が消えて、笑えるようになった。
うるさいざわつきもないし、あたしを中傷する人も居ない。
こんなに車が走っているのに、外が静かって知ったのは、初めてだ。