美容師男子×美麗女子
耳に入る悪口に聞き入らないように、あたしは机に突っ伏す。
昨日言い合っちゃったあの子はまだ怒ってるのかな。まぁ、それでもいいか。
放課になったら彰の教室に行ってやろう。それで、堂々と宣戦布告してやる。
目を閉じた瞬間、昨日の寝不足のせいなのか、あたしはそのまま意識がとんでしまった。
起きたのは丁度、放課が終わる予鈴が鳴ったところだった。
あたしは勢いよく体を起こして、周りを見渡す。
普通に、みんなそれぞれ友達同士と仲良く喋っている普段の風景。
朝よりは廊下の人が少なくなっている。
まずい。こんなに居眠りする予定はなかったのに。
2時間もの授業を寝続けたのか。
いや、それより早く彰のところに行かないと。
あたしは立ち上がって、3年生の教室がある階に下りた。
彰のクラスにはたくさんの女子が居て、あたしが近付くとものすごい形相で睨みつけてくるファンの子がほとんどだった。
ファンの子がこぞって彰の話を持ちかけてくる。
「彰先輩」
ファンの子を押しやって、あたしは教室に響くような声で言った。
教室の1番隅のほうで、楽しそうに友達と喋っていた彰は、あたしに気付いてこっちを振り向く。
「千咲、どうしたの?」
穏やかに、彰はあたしに近付く。
香水の匂いが鼻をかすめた。