美容師男子×美麗女子
「ご指名ありがとうございます」
今、あたしは笑えているだろうか。
大丈夫だよね、アキラも笑ったから。
真っ黒のスーツを着ているアキラは、学校で見ているよりもずっと大人っぽくて、高校生には見えないくらいだった。まぁ、当然なんだけど。
アキラが座った隣に、恐る恐る腰掛けた。
「なんか、ありえないって顔してる」
アキラがあたしの顔を指差した。
いつものアキラの顔が、馬鹿にするみたいに笑った。
「・・・・・・・してません」
「やめてよ、敬語。今日は客として来たんじゃないから。一応、先輩のままできたつもりだよ。こんな格好だけど」
甘い茶髪が揺れた。
そんなこと言ったって、お客様に変な対応をすると店長がうるさい。
まぁ、いいか。アキラだし。
「・・・・・なんで、あたしを指名したの」
「千咲に会いにこの店来たからね」
「ちょっと、千咲って呼ばないでよ」
「この間はアヤカって呼んだら怒ったくせに、難しい」
仕方無いじゃない。そういいかけて、やめた。
予想外に、アキラが真剣な目をしてるから、言えなかった。