美容師男子×美麗女子
仕事上、髪が短いのはまずい。
まぁ、そこを分かってくれてるのは助かるけど、こいつはなんだか変だ。
「・・・・あんたってさ、何なの」
シャキ、とハサミが入る音がする。
あたしの足元に黒い髪が落ちた。
「俺?」
あたしの質問に答える気はないような口ぶりだ。
真剣に集中したいから喋りかけるな、みたいな。
まぁ、いいか。
あたしは目を閉じた。
シャキシャキと心地いい音が耳元でする。
髪切るのなんて、いつ振りだろう。少なくとも、高校に入ってからはまだ1度も切ってない。
多分、ショートヘアにしたこともない。
いつからだっただろう。
「俺は、あんたと同じ学校の千尋。ちひろって呼んでくれ。ちなみに隣のクラスだから」
目を開けた。
大きな鏡に映っていたのは、あたしの顔の真横に並べられた、千尋の顔。
馴れ馴れしくあたしの肩に手なんか置いて、それに顔が近い。
「うん、上出来」
千尋はあたしの肩から布を取って、髪をはらう。
すぐに立ったら、頭の軽さに驚いた。