美容師男子×美麗女子
「そう、あたし、羨ましいもん」
彰の柔らかい髪が指を通る。
アルコールも気持ちよくまわって、丁度良かった。
「俺が求めてるのは、そういうのじゃないけど」
「どういうの?」
「俺は、女の子に取り巻かれるのは嫌いじゃないけど、好きじゃない」
「そうなの?」
「なんで、俺はだめなの?」
質問を質問で返された。
不意をつかれて、頭が混乱してしまう。
「はぁ?」
「俺は恋愛対象にはならないの?」
頬をつかまれる。
あたしを見下ろす彰の目に嘘はない。
「どこまでが本当で、どこまでが嘘なのか分からない」
視界が暗くなって、見えたのは彰の長いまつげ。
唇が重なって、彰の体温を感じた。
どこまでが本当で、どこまでが嘘なのか分からない。
そんなの、あたしもだ。
あたしだって、自分がよく分からなくなってきている。
そんなの、彰に説明できるわけもない。