美容師男子×美麗女子
彰は人を信用しない性格だと思う。
軽そうに見えて、自分を妥協しなくて、人を選ぶ慎重な人。
だから、簡単に愛せる人なんてできないんだろうなって思ったりした。
だけど、歪んだ環境に居たハンデを感じさせない彰は、すごいと思う。
きっと、誰よりも大人なんだ。
教室に入った。
あたしに近付く人は誰も居ない。
あんなにあたしに親しく喋りかけていたあの子だって、今は他人のふりだ。
これだから、信用ならない。
もともと、嘘ばっかの付き合いだったのは分かってたけど。
あたしだって、嘘なしで付き合ってたはずじゃない。
結局、嘘をつかない子なんていないんだ。
周りを見なくても、あたしに向けられる冷たい視線は感じる。
たった1回学校の王子との関係があっただけで、こんなに信用をなくすなんて心外だ。
あたしはそのまま机に突っ伏した。
□ □ □
「どうなの?最近」
頬杖をついた彼は、あたしに視線を向けないで言った。
あたしは顔を上げる。
「どう、って?なにが?」
彼も顔を上げた。
さらさらの黒髪は後ろに雑に束ねられていて、彼の本気が見えた。