美容師男子×美麗女子
「学校のこと。ほら、最近あの先輩に付きまとわれてるんじゃないのか」
「彰のこと?」
「あぁ」
彼、千尋は少し眉を寄せてあたしを見た。
あたしはシャーペンを一旦置いて、千尋に向き合う。
「彰とは、もう何もないってことになったし。あとは、噂がなくなるのを待つだけ」
「ふうん。丸く収まったのか?」
「うん、まあそんなとこ」
あたしも一緒に頬杖をついて、見つめ合う。
細くて白い千尋の指が、あたしの前髪に触れた。
「あたし、髪伸びた?」
「最初に会ったときよりは伸びてる」
「まぁ、そうだよね」
「なに、伸ばしてるの?仕事以外の理由で」
ふと考えてみた。
仕事以外の理由で、あたしは何で髪を伸ばしているんだろう。
「何でだろう?」
「まぁ、ここまで長いと切る勇気もないだろうけどな」
「いや、別に切ってもいいけど・・・・」
あたしは、胸より下まで伸びた自分の髪を触った。
前に1度ブリーチをしたことがあるが、それ以来どこか髪の質が戻らなくなってしまった。
髪に悪いことはするものじゃない。