美容師男子×美麗女子


「ほら、可愛いから。馬鹿な男は“花の女子高生”って騒ぐんだよ」


あたしの顔をまじまじと覗き込んで、千尋は目を細めて笑った。

こいつの笑い方はどこか不気味だ。効果音が、にやり、なんだ。


「馬鹿にしないで」

千尋の視線をそらして、あたしは部屋を見渡した。


花なんて、あるわけがない。


「・・・・・お金」


あたしは椅子の下に置いておいたカバンを手に取った。

少なくとも、髪を切ってもらった分のお金は出さないと。


「あぁ、いいよ別に。ちょうどいい練習にもなったし。気にすんな」

「練習?」


千尋はくせのついた髪を整えながら、立ち上がった。

あたしをちらりと見下ろして、口を開く。


「俺からの、頼みごと」


千尋はまたもや、馴れ馴れしくあたしの手をとった。


「俺の練習台になって」


あたしを覗き込むそいつの顔は、期待と希望に満ち溢れてる、子供の顔だった。


「・・・・・・・・・はぁ?」


手を握る千尋の手が力強くて、離さないでいる。というか、千尋のわくわく感が伝わりすぎて、離せない。



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