美容師男子×美麗女子

「これから先も、千尋は他の女を触るんでしょ?馬鹿みたいに笑って、そんで女が千尋のこと好きになって、」

肩を掴まれて、引き寄せられた方向に体が落ちると、ぐるりと世界が反転した。

千尋があたしを見下ろす。


「それが千尋の夢だってこと、知ってんだって。だから、我儘いってるってわかってんの、だけど、だけど、千尋はあたしのもんなの」


今度はあたしがキスされる。

まだ、言いたいことはたくさんあるんだ。
昨日寝れなかった分、たくさん言いたいこと考えたんだ。

「ん、…む」


顔を逸らしてそのキスから逃げようと思ったけど、顎を掴まれた。

ぐい、と天井のほうに引き寄せられて、呼吸が苦しくなる。


「ちひ、…」


酸素を求めて自然と開いた口に、つるりと舌が滑り込んでくる。

急に心拍数が上がってきた。


こんな千尋、知らない。


「っ、…」

自分の膝を、千尋の背中にぶつける。

しかし千尋はびくともしない。


口内を侵食する千尋は散々あたしを好き勝手荒らしておいて、するりと抜けていった。


ありえない、って目で千尋を見てやった。

そんなあたしを見て、千尋は今まであたしが見たことがないようなニヒルな笑顔で笑う。


「あっはははは、はは…」

「な、にわらってんのよ!!変態!!」

ヒーロー映画に出演しているんだとしたら、今、千尋は間違いなく悪役の顔をしている。


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