美容師男子×美麗女子
「…はぁ?」
「千咲はさ、自分じゃない誰かに口出されたり、近づかれるとその分だけ距離置くだろ?だから、距離置かれないように、今まで千咲がやることされることを黙って見てた」
「…そんなことない」
「ある。千咲は誰にも自分との距離を一線置いてるだろ」
どきりとした。
隠していたことが、ばれたような気分だ。
「今回はその一線に俺が入ったんじゃない、千咲が引き摺り込んだんだ」
そういわれると、もう後には引けないことを感じた。
たしかに、そうだ。
千尋の口車に乗せられて、つい言いたいことを全部喋ってしまった。
何もかも、あたしの本音を。
まるで、千尋のことを、
「好きで好きでたまらないって言ったのは千咲の方だからな」
「っ」
千尋が離れて、あたしの顔を覗き込んだ。
顔がどんどん熱くなっていくのが分かる。
「誰がいつお前をマネキンだとか練習台だとか言ったんだよ」
「言った!!前に言ったって!」
「んな訳ないだろ」
頭を撫でられる。
依然変わらないこの体勢が、そろそろ限界になってきた。
「…千尋、重い」
そう言うと、更にそいつはあたしの腰に体重をかけてきた。
睨む暇も無く、すぐに覆い被さって来る。
目が合って、温い唇が重なった。
だけどあたしの唇を舐める舌は熱くて、あたしの方が溶けてしまいそうだった。