美容師男子×美麗女子
もう後に引けない。
完全に千尋に負けた。
今日のあたしは、全然あたしらしくない。
違う、本当のあたしなのかもしれない。
「…好き」
本当のことを言うことが、どれだけ怖いのかわかった。
嘘をついていないだけ、その返事を聞くのが怖い。
あたしを見下ろす千尋の顔は笑っている。
「もっかい」
「…すき」
「それ嘘?」
「嘘なわけないでしょ」
今度はあたしが千尋をベッドに倒して、その腰に跨る。
筋肉が無くて、あたしよりも細くて、白い肌。
千尋の猫毛を掴む。
指に絡めて、引っ張った。
あたしの指に従順に着いて来る千尋に、キスをする。
「ちょ、ちさ…、」
さっきみたいに、喋る余地も与えないで。
今まで千尋にその日の気分でキスはしてきたけど、今日のキスは違った。
全然、幸せ度が違う。
唇を押し付け合いすぎて、お互い赤くなってきている。
「ちょ、唇痛い」
「…あたしも」
千尋の濡れた唇は、あたしよりも色っぽい。
「そんな予定は無かったけど、今日腰振って良いの?」
唇が触れ合いそうだったところで、寸止めする。
体を起こして、へらへら笑うアホ猫毛を殴った。