美容師男子×美麗女子
女の子は、嘘でできている。
テレビに出ている清純派の女優も、学校のアイドルも、先生も、もちろんあたしも。
嘘と嘘と嘘と嘘とときどき毒をまぜたのが、女の子。
嘘をつけない人間なんて、人間じゃない。あたしはそう思う。
羽がない鳥みたいに、牙がないライオンみたいに、尾ひれがない魚みたいに、それは全く価値のないものだと思う。
人間は嘘をつかないと、人間じゃない。
生物のなかで嘘をつくのは、きっと人間だけだと思う。
神様は利口な生き物を作ったけど、その生き物は神様まで欺く“嘘”をつけるんだ。
嘘もつけなくなったら、生きていけなくなる。
だけど、嘘をつき続けると、本当の自分が分からなくなる。
嘘じゃないことを言うのが怖くなる。
本当の気持ちを伝えると、裏切られそうな気がして怖くなる。
だけどあたしは、本当の気持ちを伝えて裏切られる怖さより、本当の気持ちを伝えられないことのほうが怖いって気付かされた。
その細い指をあたしの髪に差し込んで梳きながら、笑っているそいつの腕に抱きついた。
そいつの甘くて爽やかな整髪剤が鼻腔を擽った。
あたしは彼にキスをする。
【美容師男子×美麗女子】
END.